味のしないご飯

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ちょっと家庭内問題がうちでもあったので、過去のことを振り返ってみようかと。
こう考えるとうちの親父結構クソに見えるけどその親父を作ったのは親父の親父だと思うと居た堪れなくなる。環境も環境だから親に作られてる感が否めない。将来私もこうなってしまうんだろうか。

嫌な気持ちになるかもしれないので、こういう話に耐性がなかったり嫌いだったりする人はなるべくお早めにブラウザバックを推奨します。

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ご飯の味が分からなかった。

それこそずぅっと前の小学校入学した頃からご飯の味が分からなくなってた。味覚がないわけじゃない。酸っぱいも甘いも辛いも分かる。ただ味が分からない。
CMとかに幸せの味とかの謳い文句あるじゃん？ああいう味が分からない。ずっとご飯じゃなくて着色料の付いた粘土を食べてる気分。

幼稚園の頃は美味しい美味しいって食べてた外食もどんどん味が分からなくなっていって、でも特定の場所だと凄い美味しくて。

いつも美味しかったのは、決まって家に親父が居ない時だった。

親父は別に嫌いじゃなかった。単身赴任が多くて滅多に家に居ないけどちゃんと養育費面では育ててくれてるし、お金だって稼いでくれてる。幼稚園の頃はその父親に引っ付いてちょっと治安が悪い国に居たもんだから、買い物に行くだけで知らないおばあさんに「この子を私に頂戴」なんて言われるから育ててくれるありがたさも身に染みて解ってた。

でも親父のことは好きじゃなかった。正確に言うと段々嫌いになって行った。嫌いになって行った理由はただ単純に小学生になってから幼稚園の頃は気にしたこともなかった他の家の環境を見たから。

他の家の子供は絵で賞を取ったのを凄いって褒められてた。
他の家の子供はテストで百点取るのが凄いことだった。
他の家の子供は呼んでる声が聞こえなかったからって後ろから蹴られたりしなかった。
他の家の子供は親の機嫌を取ったりしてなかった。
他の家の子供は写真を撮る時に笑えなかったってだけで怒鳴られたりしなかった。

他の家のいいところだけよく見えて、悪いところは全然見えない。逆にうちはいいところは全然見えなくて悪いところだけ浮き彫りだった。
あれ、おかしいなって。そう思っちゃった。おかしいだなんて思わなければもっともっと何も知らずに居れたかもしれないのに。

親父は良くも悪くも放任主義で、甘えることを我儘とする価値観だった。
いつの間にか父親が怒らないように毎日警戒しながら生きてた。おはようからおやすみまで、ドアの開閉の音にも一挙一動に気を使ってた。気を抜いた時は必ず怒るから。親父が怒るといつもご飯からは味が消えた。

放任するにあたってお小遣いも多少なりとも貰えるようになった私はどうでもいいけど買い食いの美味さに目覚めた。
なんてことない10円ガム。多分それを買い食いで初めて食べたのは小学校二年生の夏。それは今まで食べたものの何より美味しくて美味しくてしばらくの間ハマってた。

でも親父がその10円ガムについて言及した瞬間それからも味が消えた。
他のお菓子もそうだった。親父が関わるたびに味が消えた。どんなに美味しいものだって味が分からなくなった。
外食するときも味が分からなかった。だからいつも一番安いか少ないものを選んでた。みんなが美味しそうに食べる中でずっと味のないサラダを食べてた。

小学校高学年になる頃には食事はもうお腹にものを詰め込むだけの作業だった。きちんと味わいなさいっていうけど、もうその頃には味は全くしなくなってたので味わうものがない。でも誤魔化すのも上手くなってたので不審に思われることはなかった。みんなが美味しい美味しいって言いながら食べてるものは便乗して美味しいっていうようにしてた。

中学生の頃はもう半分食べてなかった。夕飯は用意してもらわないようにしてたし給食も空の弁当箱を持ってって、朝にちょっと水を飲んでサプリを飲むレベル。成長期にあるまじき食生活を送ってた。

実は学校の給食もなかなかに地獄だった。親父は確かに関与していなんだけどクラスメートがこの場合敵だった。

私の学校はアメリカにあるんですけれども、アメリカ人は結構言葉が明け透け。素直って言ったら聞こえはいいけどただの空気と人の気持ちが考えられない子がいっぱい居た。
給食の配膳をしてる人の前で出てきたアップルソースとかに気持ち悪いと言ったり、吐く真似をしたり。

私はちょっと親父の影響で他の人より感受性と共感性が高い。だから誰かが気持ち悪くなったら一緒に気持ち悪くなっちゃうし、楽しそうだったら一緒に楽しくなっちゃう。

だからアメリカの子が吐く真似をしたら私も食欲が無くなるし、心底嫌そうな声を聞くとこっちの気分もブルーになる。ネガティヴな感情ほど拾いやすいからさらに困った。おかげで毎日吐くのを堪えながらご飯を食べてる。

そしてほんの数日前親父と姉貴が激しい喧嘩をした。部屋のドアが壊れる惨事となって私も飛び火で怒鳴られた。籠城の末ドアを壊され脅された姉貴だが、それでも弱ったところを見せず割とピンピンしてるのは姉貴が慣れ切ってしまったからなのか、これ以上に酷いものを知っているからなのか。

勿論その日のご飯も味がなかった。過去最高と言っていいほどに美味しくなかった。昔は好きだった献立だったのに一番美味しくなかった。

親父の帰りが遅かったりする日はたまに味がある。その時は母様も姉貴も笑ってるし、年下の兄弟たちも楽しそうにご飯を食べる。
美味しくない日はみんな笑わないし、楽しい会話なんて幻の存在になる。あの空気が何より嫌いだった。

今までなにもなかったように今も笑ってる親父が憎くて憎くて仕方なかった。

ご飯は楽しんで食べてこそ味が分かるものだと私は思う。
だからどうか、いずれ子供を育てる皆さん。ご飯の味が分からなくなるような環境を作らないようにお願いします。

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余談ですけどうちの親父、弟になんか格闘技教えてるんですよね。
気に食わないことがあるだけで人を殴ったり蹴ったりする弟になにを教えてるんだか。しかし聞く耳を持たない親父。

攻撃する術を教えるのは誰かを傷つけないためとか綺麗事を宣っておりますけれども、親父はあいつが母様や姉貴を殴ってるのを見たことあるのかなあ。私が殴られてるのを見ても特になにも言わなかったからどうでもいいのかな。

あいつもう結構デカくなってるから私も手加減できないんですけれども。

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